第48話   黒鯛のポイント   平成15年10月15日  

黒鯛のポイントが年々遠くなる。

原因は潮の加減が分からず遠くへ撒餌をする釣り人、遠くに投げれば釣れると思っている釣り人が原因である。ただ遠くに餌を放り投げれば釣れると思っている釣り人が多いのには驚かされる。何か宗教みたいな物で頑なに信じているのである。或る団子釣の人が20m投げている人が居ると其の隣では30mという風に遠投の競争が始まる。仕舞いには50m以上の遠投もある。其の釣り人がたまたま釣り上げると決まって其の次の日から皆遠投用勺を持って来ての遠投競争が始まる。

近場でも十分に釣れるのにわざわざポイントを遠くに作る必要があるのか?不思議でならない。以前は自分も遠くが釣れるような気がした事もあった。遠くの根を探るために長竿を買ってフカセ釣りを良くした。遠くと行っても岸からせいぜい10mくらいのものである。当時の酒田では今のように撒餌をして迄魚を釣るような釣りをした事がない。潮と時間で魚の通り道を予想して根や障害物周りを探って行く釣である。

然るに今の釣は撒餌を打ったり、団子で魚を集めて釣る釣が主流なのであるから、わざわざ遠くに魚を集める事は無い。ただ、岸に人が大勢いて騒がしければ遠くにポイントを作ることもあろう。闇雲にポイントを遠くに作って遠投競争をしてまで魚を集め自分ひとりが釣ったとても只一人が楽しむだけの釣りでしかない。釣は一人だけのものではなく皆が楽しむものだと考える。

自分は改造の中通し竿を使って敢えて近くに団子を打つ。

中通し竿であるから、遠くには飛ばせない。かといって外ガイドの竿で遠投も出来ない事はないのだが、近くでも十分釣れると云う見本を見せたいのだ。軟らかいハエ竿でゆっくりと楽しんでから魚を取り込む。こういう釣もあるのだと若い釣り人に教えたいのである。元々庄内での釣りは楽しむ釣りであった。決して数を釣る釣ではない。漁を職業とする釣ではないのであるから釣り人は魚釣りを楽しむものであって欲しいのである。